リリース情報、お客さまへのお知らせなど
2026.02.10
【企業インタビューシリーズ】 -チューリング株式会社- 元将棋AI開発者が挑む完全自動運転──大規模分散学習に最適なGPU環境とは
お話を伺った方 チューリング株式会社 代表取締役 山本 一成氏 プロフィール:1985年生まれ。愛知県出身。東京大学での留年をきっかけにプログラミングを勉強し始める。その後10年間コンピュータ将棋プログラムPonanzaを開発、佐藤名人(当時)を倒す。東京大学大学院卒業後、HEROZ株式会社に入社、その後リードエンジニアとして上場まで助力した。海外を含む多数の講演を実施。情熱大陸出演。現在、愛知学院大学特任教授も兼任。 お話の相手 GMOインターネット株式会社福井 敦子 氏(インタビュアー)佐藤 嘉昌 氏(システム本部 プロジェクト統括 エグゼクティブリード)大川 将史 氏 (システム本部 インフラ技術部 仮想化・共用技術チーム) 元将棋AI開発者が挑む完全自動運転 -まず “今” のチューリングはどのような会社でしょうか。社会的な役割についても教えてください。 山本氏: チューリングが目指しているのは、どんな状況でも車が人間の代わりに運転操作をしてくれる「完全自動運転」の実現です。最終的には“ハンドルのない車”を目指していて、そのためにAI中心の自動運転「E2E(エンド・ツー・エンド)自動運転モデル(※)」や「VLA(Vision-Language-Action)モデル」の開発に取り組んでいます。また、チューリングは全社目標として2025年12月末までに東京都内の市街地で人間がハンドル・アクセル・ブレーキに一切介入せず30分以上にわたって自動運転の連続走行を目指すプロジェクト「Tokyo30」を掲げていて、11月に達成しました。世界にはテスラなど強力な競合がいますが、この技術を通じて、自動運転技術の商業化と日本の自動運転開発を本気で前進させたいと考えています。(※)カメラ画像からハンドルまでの動きをAIが学習しコントロールする技術 -将棋AIの第一人者としてのご経験から、自動運転という新領域を選んだ理由は? 山本氏:最初はタッチタイピングから始めたんですが、将棋AI「Ponanza」の開発は、本当に大変だった。でもその旅は本当に面白くて、 “良い課題”に出会えるとこんなにいいことがあるんだって実感したんです。一方、日本には優秀なエンジニアが本当に挑むべき難題になかなか出会えないことを不満に思っていて。だからこそ、シリコンバレーみたいに、難しい課題にどんどん挑戦していく文化を日本でもつくりたいなと。 “良い課題”って、解くべき難しい課題のことで、課題が解けたらベネフィットがある課題。そしてその難しい課題を解くと、人類を救う、そしてお金を生む。自動運転はこの3つの条件を満たしているからです。 “頭のいい人たちが、めちゃくちゃ難しくて面白い課題に挑戦できる環境”を自分たちでつくればいいんだと思い、組織を創りました。ー日本のAI産業は海外と比較して遅れている、または先行する海外が進みすぎているという見方もあるかもしれませんが、日本のAI産業に対する見解を教えていただけますか? 山本氏:遅れている。すごく負けている。それを見つめたほうがよいと思っています。メンバーには、安易な差別化をするな、安易に強みを出そうとするなと伝えています。テスラなど、先人をリスペクトして理解して、負けていることを受け止めたうえでどうしたら強くなるかをメンバーにはよく話していますね。トヨタも昔はフォードやGMなど海外の企業から多くのことを学んだと思う。AIもそのくらいの遅れがあると理解して進んでいくのがいいんじゃないですかね。でも課題が大きいことは良いことですね。この原動力は、「次は、テスラを倒す!」くらいがちょうどいいんじゃないかなと思っています。 ー自動運転EVの製造販売から、現在の自動運転AI開発にシフトされた理由は?方針変更のスピードが速かった点についても教えてください。山本氏:良い自動運転を作るにはソフトからハードまで一貫設計するのが理想的ですが、ただ、ハード量産には相当な企業体力が必要です。悔しいですが、今は“自動運転(ソフト)に集中”するのが最適解と判断しました。方針転換はプロダクトづくりでは普通のことです。最初から予想通りにすべてうまくいくということはなかなかないことで、難しい話でもありますが、人の想いとか、正しいけど変えられないとか、解決策は本当に難しいんですが、組織の慣性と戦いながら、正しい判断を実行し続けるだけです。方針変更のスピードが速かったと見えたのは光栄ですが、社内では揺れる部分もありました。 ー「GMO GPUクラウド」をご利用いただいていますが、導入の決め手や評価、リクエストがあれば教えてください。 山本氏:私たちは大規模分散学習が必須ですが、単に高性能GPUを並べればいいわけではなく、GPU間通信・ストレージ性能まで含めて設計する必要があります。その点で、御社は国内では稀なレベルのネットワーク実装や運用の知見がありました。当時 高性能分散ファイルストレージや ジョブスケジュールエンジンをフルマネージドで提供しているところは国内ではほとんどなく、その点が大きな決め手となりました。また、運用とサポートの手厚さは非常に重要で、回線の増強など改善のスピードも早く、助かっています。私たちはもともと自社でもGPU環境を構築しているのですが、御社の構成は私たちの環境と近い部分が多く、非常に使い勝手がよかったと感じています。大規模なニューラルネットワークを分散環境で作るというのがもともと設計されている仕組みだったというのが大きい。他にないですよね?! 佐藤(GMOインターネット):他社さんで、というと当社に似た構成のサービスも出始めています。真似されるということは光栄ですし、より先行しなくてはという気持ちがあります。 大川(GMOインターネット):チューリングさんには本当にとがったエンジニアさんが多くいらっしゃるので、日頃の運用の中で、細かいパラメータの設定をトライ&エラーで繰り返して、GPUのロスが少ない運用をするための知見を相当にお持ちだと思います。 山本氏:あと、計算機基盤としての性能を他社と比べてみると、運用の安定なども含めて、めっちゃGMOさんを頼りたいと思っています。めっちゃ頼る作戦を社内でも話しています(笑) ー完全自動運転が実現した社会はどう変わると思いますか?倫理(いわゆる“トロッコ問題”)への向き合い方についても教えてください。 山本氏:自動運転が実現するということは、エレベーターに乗るのと同じように不安や緊張を感じずに“意識せず乗る”存在になるということでしょうね。車の運転ってとても楽しいものですが、A地点からB地点に移動するには制約もある。起きていないといけないし、緊張していないといけない。これに比べて自動運転が実現すれば移動はもっと楽になりますし、それ自体が文明の前進ですよね。将来的にはカメラからアクチュエータまで全部つながった“フィジカルAI”が大型機械全般に広がると見ています。倫理の話でいうと、最終的にはVision-Language-Actionモデルになって、LLMのアラインメント問題として倫理パラメータを内蔵せざるを得ないと思っています。乗員と歩行者の命の重みなど、内部でちゃんと倫理調整を行う設計が必要なんですよね。そもそも人間にも解けない問題なんですよね。だからこそ誠実に仕様として落としていくことが大事だと考えています。 ー山本CEOの今の頭の中は、経営思考?それともエンジニア思考?そのバランスについて教えてください。 山本氏:エンジニア思考、ここ1か月くらい特に。経営をしているかといわれると正直わからない(笑)。AIや技術は特に難易度が高くなっていて、イーロンマスクがすごいのは、AIや技術を理解したうえで正しい判断をして経営ができているという点。AIのことは私のほうがわかっていると思うけど(笑)。今は作っているものがとても難しいし、経営者はそこに対する理解が必要。なので、技術者のままでも良いんじゃないかなと思っています。日本の経営者でそういう出身者は少ない。組織は、(自分に対して)社長として大人になれといってくる。でも俺は負けない!(一同大爆笑) ー若手エンジニアやAIを志す人へのメッセージを。 山本氏: “変わり続けること”を認め続けるしかないと思います。今のエンジニアは結構大変ですよね。変わり続けないといけないから。 AI技術の変化は激しく、経営判断の中で技術が占める重さは人類史上最大級です。作っているものの進捗が外から見えにくい時代だからこそ、技術をわかるリーダーが正しく判断する力が重要なんですよね。今の若い世代は大変だと思います。でも、その最前線にいること自体が価値あることですよ。 編集部のひとりごと 取材を終えて感じたのは、山本CEOが体現する「技術者であり続ける経営者」というスタイルの説得力。完全自動運転という難題に立ち向かう強い意志と、飾らない語り口で人を惹きつける魅力。この二つが自然と融合し、組織を動かす原動力になっていると感じました。印象的だったのは、取材の合間に始まったエンジニアトーク。動画のメタデータの保持手法や、GPU・CPU運用の実践知。専門的な話題になると、場の熱量が一気に高まる。この技術への純粋な探究心こそが、急速に変化するAI業界での的確な判断を可能にしているのだろう。 動画はこちら
2026.01.05
【企業インタビューシリーズ】 -Sakana AI- 日本のAI産業をリードする、フロンティアAIラボの使命
―お話を伺った方Sakana AI株式会社リサーチエンジニア E氏 ―会社概要Sakana AIは、2023年にデイビッド・ハ(CEO)、ライオン・ジョーンズ(CTO)、伊藤 錬(COO)によって設立された東京拠点の研究開発企業です。日本最速のユニコーン企業で、世界水準でも最先端のAI関連技術を生み出し、AI研究の最前線を切り拓いています。 「フロンティアAIラボ」としての使命 ―Sakana AIについて教えてください。 Sakana AIは国内で設立されたフロンティアAIラボです。当社が掲げていることは大きく2つあり、1つ目は、AI開発国として日本のポジションを確立することです。現在AI産業はアメリカと中国がけん引していますが、経済力がある日本でも研究力と競争力を持ったラボを作りたいと考えています。そして2つ目はそれに付随して、人材の育成、それに伴う産業の成長を後押しすることです。 ─日本のAI産業は他国と比較して遅れている、という印象でしょうか。また、その理由についてどのようにお考えですか。 これは私個人の見解になってしまうのですが、日本が大きく遅れているというよりは、アメリカと中国の成長速度が著しく速いという印象です。日本のAI産業が世界で戦えていない理由で特に大きいのが人材不足であると考えています。人材がいるから産業が生まれ、産業があるからチャンスが生まれ、そして人材が成長していく、という好循環に日本はまだ入りきれていないと感じています。 ーAI産業の発展に向けて、国や政府に期待することはありますか。 経済産業省とNEDOが取り組んでいるGENIAC(Generative AI Accelerator Challenge)(※1)というプロジェクトがあり、本プロジェクトには非常に大きな後押しをいただきました。当社はAI人材を抱えているという強みがあるので、国の支援も受けながら共にAI産業の発展に貢献していければと考えています。 (※1)GENIAC:基盤モデルの開発に必要な計算資源の調達、データセットの蓄積、ナレッジの共有等の支援、生成AIの社会実装を促進等に取り組むプロジェクト ー少数精鋭で運営されている印象ですが、人材を確保していくうえでどのような方針を掲げていますか。 立ち上げ当初は少数で運営されており少数精鋭という印象があるかもしれませんが、2025年初頭にはAppliedチーム(事業開発本部)を始動し、積極的に人材の採用を進めています。Appliedチームでは、すでに国内外の主要パートナーとの連携が始まり、業界の業務プロセスを大きく変えることを目指すプロジェクトが次々と立ち上がっています。創業者のデイビッド(CEO)やライオン(CTO)のような業界における著名人がいることで優秀な人材が集まりやすいのは強みだと思っています。 ─さまざまなプロジェクトがあるかと思いますが、どのように運営されていますか。 大きく二つのチームに分かれています。一つ目は生成AI技術の研究開発を行うResearchチーム、そして二つ目は、最先端の生成AIやAIエージェント技術を駆使し、日本の最重要課題の解決に長期的な視点を持って取り組むAppliedチームです。この両チームが互いに協力し合いながら、プロジェクトに取り組んでいます。 ─貴社は日本語モデルのAI開発が特徴ですが、AI開発において日本語という言語特有の難しさはありますか 日本語のニュアンスを含めた開発は、日本の文化や言語を深く理解している人にしかできないと思います。 日本はハイコンテキストな文化で、言葉を省略したり、文脈で判断したりする傾向が他の文化に比べて高いと考えています。この暗黙知や文化的背景を汲み取ったAI開発は、日本の会社だからこそできることだと考えています。 「GMO GPUクラウド」の採用の背景 ─E氏の役割について教えてください。 肩書はリサーチエンジニアです。計算機インフラの構築・運用・管理をしています。具体的には、いわゆるHPCのスタックで必要となるドライバーのインストールやライブラリの管理などをしています。また当社で研究開発している小規模モデル・大規模モデルの学習や評価を行っています。 ─AI開発インフラに「GMO GPUクラウド」をお選びいただいた理由を教えてください NVIDIA様からご紹介いただいたことがきっかけでした。その後トライアル利用期間を経て、3つの良さを実感したことが決め手でした。 1つ目は、大規模分散学習に必要なソフトウェアスタックが完璧に揃っていた点です。高速ストレージ、高帯域インターコネクトに加え、NCCL、CUDA、cuDNN、HPC-X(※2)など、AI開発に必要なライブラリ群が多様なバージョンで用意されており、環境構築の手間なく即利用が可能でした。 2つ目は、迅速かつ手厚い技術サポート体制です。迅速な対応により、アイドル時間を最小化し、研究開発の継続性を担保することができています。サポートチームも日本国内にあるということで時差がなくご対応いただけるのも非常に助かっているポイントです。3つ目は、高度なモニタリング環境GPUサーバーの稼働状況・温度・消費電力をリアルタイムで可視化するGrafanaダッシュボードが利用可能で、学習効率を常時把握・最適化できたことです。計算リソースを最大限に活用できる開発体制を実現できました。 また、見過ごしがちなのが環境構築期間にかかってしまう費用です。例えば、環境構築に2週間かかったら、その期間はコストロスです。ソフトウェアスタックが揃っておらず、自分たちで構築するのに時間がかかりすぎて学習効率が10%下がったとします。すると、10ヶ月借りても実質1ヶ月分は無駄になるわけです。「GMO GPUクラウド」は、こういった無駄なコストが発生しないことを確証できている点も、採用理由として非常に大きいです。 (※2)記載されている製品名等は各社の登録商標あるいは商標です。 ─海外や国内の他サービスとの違いを教えてください。 ベアメタルを提供されているベンダーさんは使いやすい一方で、構築コストやソフトウェアのアップデートなど対応コストがかかるという面もあります。また海外のクラウドにて日本以外のリージョンの計算資源にアクセスする場合は、レイテンシが高くログインやコマンド実行に時間がかかったり、安全性の観点でより慎重なデータの取り扱いが求められたりします。日本国内の会社同士だからこそ、計算資源の確保・割当を迅速にできるのも開発スピードを担保するうえで強みだと思っています。ソフトウェアスタック自体に大差は出にくいのですが、データの安全性や機密性、計算資源が確保しやすいことは国内ベンダーならではの優位性だと考えています。また、ベンダーさんによってはGPUに共有されるワット数が制限されている場合があり、計算効率が下がり、結果的にコスト効率が悪化するということがあります。しかし、「GMO GPUクラウド」では、ワット数も十分に担保されているため、電力効率を維持して開発ができているので助かっています。 ─国内にある計算基盤の価値についてどうお考えですか。 非常に重要だと考えています。理由は2つあります。 1つ目は、データの安全性と機密性です。データの機密性が重要になる領域では、国内でしかデータを扱えないという要件があります。海外のクラウドベンダーでは、この要件を満たせない場合があり、その場合に国内計算基盤の重要性が高まります。 2つ目は、GPUの確保のしやすさです。海外のクラウドベンダーは多くの企業が利用しているため、GPUが確保できないことがよくあります。日本国内にあり、日本の会社同士だからこそ、迅速にGPUを確保でき、協力していける。これは開発スピードの面で大きな強みです。 ─2025年度中に次世代の「NVIDIA Blackwell Ultra GPU」を搭載した「NVIDIA HGX B300」のクラウドサービスの提供を予定しています。次世代GPUについてはどのようにお考えですか。 2、3年後にはBlackwellがAI・LLMの学習で使用されるGPUのデファクトスタンダードとなる可能性も非常に高いと考えており、弊社もBlackwellの使用を視野に入れています。Blackwellの利用も早期に開始し、知見を社内で溜められると良いと考えています。 ─「GMO GPUクラウド」の今後に期待いただいていることがあれば教えてください。 今回のプロジェクトを通じて、「GMO GPUクラウド」は間違いないクラウドサービスであることを確信しました。他の企業が今後モデル開発する際にも、第一候補として上がる会社になると思います。 AIにおいて、安全保障も関わる中、インフラは本当に非常に大切です。GMOインターネットさんのような会社が日本のAIインフラを担ってくださることは素晴らしいことだと思いますし、今後も協力しながら日本のAIインフラの担い手として一緒に頑張っていけたら嬉しいです。 以上 編集部のひとりごと 今回のインタビューは、虎ノ門にある Sakana AI様のオフィスで行わせていただきました。 オフィスフロアに入ると、木の温もりを感じる内装が広がり、ガラス張りで開放感のある執務スペース、座れる階段、巨大なジェンガのようなおもちゃが置かれたフリースペースなど、まるで海外のオフィスを訪れたかのような雰囲気が漂っていました。 ミーティングルームの名前もユニークで、全体的に画一的な印象がなく、創造性を刺激する空間になっていると感じました。 このような場所で、日本のAIの新しい礎が築かれているのだと実感した訪問でした。
お問い合わせフォームにご入力いただき、送信ボタンをクリックしてください。
弊社担当からご入力いただいたメールアドレス宛にご連絡いたします。
個人情報の取り扱い*
GMOインターネットでは、取得した個人情報を弊社が定める「個人情報の取り扱いに関する指針(https://internet.gmo/terms/privacy)」にしたがって適正に管理します。
個人情報に関する取り扱いにご同意いただける場合は以下のボックスにチェックしてください。