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株式会社オー・エル・エム・デジタル
四倉 達夫氏(研究開発部門 / 取締役 / R&Dスーパーバイザー)
前島 謙宣氏(研究開発部門 / Head of Research)
深谷 祐太氏(研究開発部門 / シニアシステムエンジニア)
馬場 洸輔氏(研究開発部門 /システムエンジニア)
GMOインターネット株式会社
酒井 香穂 氏(インタビュアー)
大川 将史 氏 (システム本部 インフラ技術部 仮想化・共用技術チーム)
オー・エル・エム・デジタル(以下、OLMデジタル)」は、「ポケットモンスター」をはじめとする数多くのアニメ作品や、フルCG作品、VFX映像などを手がけるOLMグループの一員として、フルCG・アニメーション・実写作品におけるデジタル映像制作の全工程を担う企業です。アニメ業界では数少ないR&D(研究開発)部門を有している点も大きな特徴です。
今回は同社が参画するプロジェクト「ANIMINS(ANIMe INSight)」における「GMO GPUクラウド」の活用実態を取材しました。「ANIMINS」は、経済産業省およびNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)が推進する、国内の生成AI開発力強化を目的としたプロジェクト「GENIAC(Generative AI Accelerator Challenge)(※1)」において、データ・生成AI利活用実証事業者の一社として採択された調査プロジェクトです。
(※1)基盤モデルの開発に必要な計算資源の調達、データセットの蓄積、ナレッジの共有等の支援、生成AIの社会実装を促進等に取り組むプロジェクト
ー御社 について教えてください。
四倉氏:OLMとOLMデジタルは映像制作会社で、制作の7割以上がアニメです。いわゆるテレビアニメや劇場版アニメなどを制作しています。
OLMが作画をメインとしたアニメを担うのに対し、OLMデジタルはTVアニメや劇場版アニメにおける3DCGやVFX (※2)を中心に “ハイブリッドアニメ”や“フルCGアニメ”の制作を行っています。
私たちはその中でもR&D部門に所属しており、映像制作ツールの開発やパイプラインの構築などに携わっているチームです。
(※2)映画やテレビドラマなどの映像作品において、撮影後に画面効果を実現するための技術。

四倉 達夫氏
ー今回、「GMO GPUクラウド」をご活用いただいたANIMINSについて詳しく教えてください。
四倉氏:経済産業省とNEDOが推進する、国内の生成AIの開発力強化を目的としたプロジェクト GENIACにおいて、データ・生成AI利活用実証事業者のひとつとして採択されたプロジェクトです。
本プロジェクトの目的は、生成AIを「クリエイターの代替」ではなく「制作現場のサポートツール」として捉え、既存の産業アニメのワークフローにどう馴染ませ、どう利活用していくかを検証することです。具体的な取り組みは大きく3つ。大学との産学連携による基盤技術の研究開発、アニメ、ゲームなどの隣接領域を対象にした生成AI活用の実態調査、そして技術を”使える状態”にするための制作現場での実用検証です。「技術は使えてこそ意味がある」という考えのもと、制作支援に直結するプロダクションユースを最重要と位置づけています。
ー具体的な取り組み内容について教えてください。
四倉氏:一例が、アニメ制作の「仕上げ」工程(線画に色を落とす工程)を支援するシステムで、社内では『SHIAGEDO (しあげどう)』 と呼んでいます。 開発は今ほど生成AIが盛り上がる前から、産学連携で足掛け約8年取り組んできて、現在はマレーシア拠点でも実証実験を行っています。カットにもよりますが作業効率が3〜5割改善したという報告もあり、一定の成果が見えてきています。 また、ANIMINSプロジェクトメンバーのスタートアップであるAI Mageさん(https://ai-mage.jp/)の“作品特化型の検索・対話”技術を活用することで、膨大な素材の中から類似カットを探し出し、カット情報のタグ付けもほぼ自動化しています。その結果、人の手作業を最小限に抑えながら、運用から登録までの時間を大幅に短縮できています。
ー今回の導入のポイントをおしえてください。
四倉氏:導入の主目的は、より強力で扱いやすいGPUリソースの確保です。画像・動画の基盤モデルが次々と登場したことで技術の進歩が非常に速く、「新しいモデルが出たらすぐ試す」というサイクルへの対応が必要になっていました。 比較検討をする際に重要だったポイントは、ジョブ投入・スケジューリングできる“マネージドな仕組み”があることでした。今回は複数の研究機関が一斉に使うという前提があったため、管理・運用の面で(例えば)ジョブスケジューラが搭載されているか、といった観点も評価していました。 そのうえで、導入までのスピードが決め手になりました。「GMO GPUクラウド」では短い準備期間で環境を提供いただけましたし、マネージドサービスの特性上、利用開始時点からセットアップ済みであることから、すぐに開発を始めることができました。もちろん価格面も含め、融通いただけて助かりました。
ー具体的なワークロードについて教えてください。
前島氏:主に大規模なモデルの学習まわりで活用しました。動画生成や、画像処理系の基盤モデルのスクラッチ化の学習やファインチューニングなどです。 また『SHIAGEDO』をベースに派生した複数モデルを、同一データセット上で短期間にまとめて評価する用途で活用しました。 特に、1月末にあったANIMINS最終報告会の直前は、素材の確定から1週間程度で評価を完了する必要があり、評価用のマトリクスを短期間で埋める必要がありましたが、 そのタイミングで急遽GPU台数を増台いただき、結果的に1週間で評価を完遂できました。 学習だけでなく推論においてもGPU単体の処理性能が高く、加えてジョブスケジューラを活用した分散処理で一気に処理を回せることが効きました。リソースを柔軟に増やせる点も良かったです。

前島 謙宣氏
大川氏:「GMO GPUクラウド」をチームで利用する際に感じたことなどあればぜひ教えていただけますか。
前島氏:ジョブスケジューラが標準搭載されていることで、誰かに利用状況を確認することなく、とりあえずジョブとして投入しておけばいいのが有難かったです。以前ANIMINSで、自社のGPUサーバを利用している際は「使う前にユーザ同士で宣言して、空いていたら使う」という譲り合いで運用をしていましたが、今回はそれを気にせずできたのは楽でした。
深谷氏:複数の事業者さんとサービスを共有する中で「割り当てを変えたい」となった場合でも「GMO GPUクラウド」なら中央管理ができるので、アカウントの整理や権限割り当て変更などの手間も減りました。
ーサービス面で良かった機能、付帯機能の評価があれば教えてください。
深谷氏:マネージド型のサービスとして提供されていることで「環境が汚れない」というところは非常に良かった点です。また、コンテナ形式でジョブを投入することもできるため開発が容易でした。一般的なLinuxとしての操作に慣れているユーザも多いため、そこは慣れや熟練度に応じて使い分けていけるのがいいと思います。形式でジョブを投入することもできるため、熟練度に応じて活用していた研究者の方もいたようです。

深谷 祐太氏
深谷氏:データセンターにて自社サーバを運用していますが、こちらは障害が起きてもすぐに対応できるわけではありません。一方で「GMO GPUクラウド」は 24時間365日の障害検知、保守対応が付帯するため、深夜の障害でも当たり前のように対応していただくなど、多大なサポートをいただけました。やりとりも、分からないまま時間が経つことがほとんどなく、今どういう状況か逐次教えていただきました。
また、付帯機能としてGrafanaダッシュボードが提供されているのですが、これは本当にあってよかったです。単にGPUの使用状況が分かるだけでなく、「ジョブが失敗した」「何かおかしい」といった報告をユーザから受けた際にこちらで当該日時の状況を確認し、裏でノード障害が発生しており、〇分で交換いただけたようだ、といった情報を判断できる状態だったので大変助かりました。
ー今後「GMO GPUクラウド」を利用される方へアドバイスはありますか。
深谷氏:当初はスクラッチ領域(ノード上の領域)を活用して開発することを考えておりましたが、耐障害性の観点から1ノード契約であっても共有ストレージの契約が有効だと思いました。ノード交換後に代替ノードでそのまま情報にアクセスできたり、データロストの懸念が減少する点でも、おすすめです。
ー「GMO GPUクラウド」はどんな方におすすめだと思いますか。
前島氏:自前環境では難しかった基盤系の大きなモデルのトレーニングができるようになったことがとても有難かったので、 そういった取り組みをしたい方には、ぜひおすすめしたいです。機材だけ用意されても自分たちで使えるようにするとなると時間がかかりますが、「GMO GPUクラウド」ならば導入してすぐに使えるというところもおすすめしたいポイントです。
ーアニメーション制作におけるAI活用にどのような可能性を感じているか、最後にお一人ずつ教えてください。
馬場氏:現場は人手不足、という状況の中で、AIを人に取って代わるものではなく、人のサポートとして導入し、アニメーション制作効率化を目指したいです。

馬場 洸輔氏
深谷氏:現場とやり取りする中で、「便利そうだけど使っていいのか分からない」「活用方法がわからない」というギャップもまだ大きく、制作現場のサポートツールとしての伸びしろは大きいと感じます。映像制作における人とツールのそれぞれの強みを生かした “現場で使える形”にしていくことが重要だと思っています。
前島氏:新しい表現のためのAIの活用方法を模索していきたいと考えています。また、生成された画像やAIは細かな部分で演出意図に沿っていないと感じることがあるので、人間の指示が適切に反映されるようにしていきたいです。
四倉氏:産学連携を継続し、新しい技術がプロダクションニーズに結び付く循環が重要だと考えています。クリエイティブとテクノロジーを両輪で進めることで、よりクオリティの高いアニメができていくと思いますので、AI人材や活用できるインフラが業界全体で成長していくことを、1人のアニメファンとしても期待しています。
オフィスに足を踏み入れると、多くの人々に愛される有名作品のキービジュアルがずらり。日本が世界に誇るアニメーションは、独自のキャラクターデザインと繊細な世界観が世界中の人々を魅了し続けています。一方、アニメーション制作現場では人手不足やそれを補うための生成AI活用においても、著作権やワークフローとの適合など、さまざまな課題もあります。そうした中で、制作現場に寄り添う形でAIをどう活用していくのか。今回の取材は、その可能性と現場のリアルを垣間見る機会となりました。
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